ドイツの軍用馬車1
--------------------
ハンドル名:妖ふる
作品名:ドイツの軍用馬車1
自由作品
実写部門
--------------------


■馬の軍隊

電撃戦の勝利やタイガー戦車の大活躍のおかげで、ドイツ軍=機甲師団と
いうイメージがあります。しかし機甲師団の華々しい活躍の裏では、実際
には多くの部隊が旧態依然とした輸送手段に依存していました。世界有数
の工業生産力を誇った当時のドイツでさえ陸軍の機械化は容易ではなく、
自動車化された師団は大戦の全期間を通じて一部に過ぎませんでした。

そんなわけで、ドイツ軍では多数の軍用馬車が使われていました。輸送用
はもちろん、砲兵観測馬車や電話馬車、無線馬車など特殊用途の馬車もあ
りました。また、より小型の二輪の荷車も制式に使用されていました。こ
ちらも様々な種類があり、なかには2cm機関砲を搭載したタイプさえ存在
しました。

特殊自動車にSdkfzで始まる型番が与えられたように、馬車や荷車も制式
器材ですから、ちゃんとHf.2などの型番がついていました。Hfは Heeres
fahrzeugの略です。おなじみのフィールドキッチンもこの分類に含まれま
す。また特定の兵科向けとしては、歩兵科のIf、砲兵科のAf、通信科のNf
その他があります。

馬車による輸送は自動車に比べると効率が悪く、水や飼料の確保、馬の健
康管理など手間もかかりました。しかし悪路や天候、そして不十分な補給
に悩まされた東部戦線では、自動車が動けない状況にあっても馬車は黙々
と任務を遂行しました。兵士達にとって馬車は頼りになる戦友だったので
す。

馬車は大戦後半にも引き続き使用され、44年には四万七百台の歩兵荷車、
15万台もの野戦馬車が製造されました。電撃戦を創始したドイツ軍ですが
実質的には最期まで「馬の軍隊」から脱却できなかったと言えるでしょう。



■重野戦馬車Hf.2 :Schwerer Feldwagen Hf.2

Hf.2は汎用の大型馬車です。古風な外観からも分るように来歴は古く、原
型は第一次大戦で使われた05型重補給馬車です。自重は0.8t、2立方メー
トルの荷台に1.2tまでの貨物を載せることができました。車体前部は前輪
のステアリング範囲をクリアするために斜めに切り欠かれ、ドイツ軍用馬
車の独特なシルエットを構成しています。車外装備は右側にシャベル、左
側に手おのを装備します。予備のながえを車体側面のホルダに備えている
例も見られます。

小型の野戦馬車Hf.1、Hf.3には基本型のほかに用途別の派生型がありまし
たが、Hf.2には派生型がなく、基本型のまま装備、糧食の輸送など各種の
任務に従事しました。砲兵部隊で弾薬輸送車として使われる事もありまし
た。

Hf.2は、積荷の重量に応じて通常は2頭または4頭の馬で牽引されます。馬
一頭につき500Kg程度の重量を負担できたようですが、路面や地形など条件
によっては野砲なみに6頭を用いることもありました。また、先頭に1頭を
追加して3頭で曳いている例も稀に見られます。その他、珍しいところでは
2頭の牛で曳いてみたり、ドン・ステップにて2頭のラクダに曳かせてい
る写真などが残っています。余談ですが、南部ロシアで編成されたロシア
軍部隊が、そのままラクダを連れてベルリンまで攻めてきたという話もあ
りますから、ラクダは砂漠だけの風物ではなかったようです。


■作品について

キットは旧エッシーの1/35サプライワゴンです。今年イタレリから救護馬
車とセットで久々に再販されました。

サプライワゴンは重野戦馬車Hf.2を模型化したと思われますが、いろいろ
変なところがあります。特に前輪の位置は後ろすぎるので、取付軸を20mm
ほど前進させ、さらに車輪と馬具の干渉を避けるために、ながえを根元で
2mm伸ばしました。

荷台の後部側面は垂直です。後部扉につられて斜めに接着しないよう気を
つけて下さい。キットのような後部扉は資料には出てきませんが、存在し
たのでしょうか。車体の形状も微妙に違いますが、さすがに手が廻りませ
んでした。車輪はエッシーのままでも良いのですが、タミヤ・フィールド
キッチンのがメリハリがあって格好いいです。Hf.2に使うにはスポークが
細い気もしますが、イメージ優先で流用しました。

塗装は36年の規定では、幌を含めて外側は旧型の三色迷彩、内側はフィー
ルドグレーとなっています。大戦初期の車体は当時のカラー写真ではグレ
ー単色に見えます。

キット付属の馬はよく出来ており、これだけでも買う価値があります。ド
イツ軍制式の25型革製馬具(Sielengeschirr25)が精密にモールドされて
いるので、他の馬車や荷車に流用するなどの使い方もできます。馬具のベ
ルトは黒と茶色の2種類あったようです。馬の目つきが悪いですが、瞳の
くぼみをパテで埋めるとハンサムになります。

サプライワゴンは第一次大戦の馬車と略同型なので、細かいことを気にし
なければICMのドイツ兵やタウロのA7Vなどと一緒に使うこともできます。
救護馬車の方は恥ずかしながら全然資料が見つからず、存在そのものを確
認できませんでした。

なお、Hf.2のキットはプライザーの1/87もあります。ミニスケールながら
よく出来ており、馬4頭とドイツ兵4体も付属しています。


つづく