『陸自・総合火演199X年・88式自走高射機関砲』
 199X年、夏の北海道での陸上自衛隊総合火力演習で初登場した対空戦車
“88式自走高射機関砲”は、80年代中頃の日米貿易不均衡是正の産物だった。
 当時、バブル経済が始まり空前の好景気に沸いていた日本に対し、景気低迷に
頭を悩ませていたアメリカ政府は日本政府に対し様々な経済自由化とアメリカ製品
購入への圧力を強め、その中には基幹産業である兵器も多く含まれていた。

 その時のアメリカ製兵器導入圧力は、海上自衛隊−イージスシステム導入、
航空自衛隊−FSX《次期支援戦闘機》日本独自開発破棄…F16べ−ス日米共同開発、
AWACS(早期警戒機)購入と多岐に及び、陸上自衛隊に対しては74式戦車の後継
主力戦車としてM1A1エイブラムスの採用を迫っていたのである。

 これにはさすがに『主力戦車独自開発だけは譲れない』とする防衛族議員と制服組
が猛反発したが、他に意外な所から反対の声が上がった。それは建設省である。曰く
『日本の道路及び橋は約60tものM1A1の重量に耐え切れない。』というものであっ
た。日本の次期主力戦車の計画重量は50tであり、その差は致命的だった。
 当時の中曽根内閣はこの物理的問題とアメリカ政府の圧力との板ばさみに苦慮した
末に代案を提示した。それは主力戦車の代わりに、当時開発中だった“新型対空戦車
(仮称・87式自走高射機関砲)”の日本独自開発を破棄し日米共同開発するという
ものだった。そして生まれたのが正式名称“88式自走高射機関砲”である。

 88式は車体に74式戦車を利用する点においては87式案と同様だったが、
主砲は87式案のエリコン35mmx2からボフォース40mmx2へと変更された。
何の事は無いアメリカ陸軍において配備キャンセルになった対空戦車“M247・
サージャントヨーク”のコンポーネントを僅かな改良で強引に搭載したのである。

 以上の経緯で完成した“日本版ヨーク・88式自走高射機関砲”であるが、
走行性能が87式案より砲塔重量増加のため若干落ちたものの、防空能力は
きわめて良好であった。アメリカに“ヨーク”のシステムとテストデーターを完全
提供させたおかげで、より高度な防空管制システムが構築出来たばかりか搭載
コンピューターも“ヨーク”時代とは比較ならない位、飛躍的に高性能化していた
からである。

『アメリカさんから貴重なシステムとデーターを提供してもらえたおかげで、我々が
むしろ得をしましたね。』(防衛庁幹部)
 
 結局88式は87式とヨークの『良いとこ取り』の対空戦車となり、ドイツのゲパルト
にも不可能な『走行中の防空射撃可能(ヨークシステム)』という能力も付加され
機関砲型としては世界最高性能の対空戦車として完成した。しかも1両あたりの
値段も、開発費の大幅減により87式案での推定16億円からなんと12億円に
下がった(それでも高すぎ)のであるから、まさに良い事ずくめの選択となった
のである。

*以下の画像は総合火力演習における第7師団所属“88式自走高射機関砲”の雄姿で
ある。(背後には同師団所属のM551・シェリダン空挺戦車も見える。
 20年前に60式(106mm)自走無反動砲の後継として、対装甲車両迎撃任務に
就役したシェリダンであるが2004年には全車退役が予定されている。)
 
   以上『月刊・ワールドタンク』誌199X年11月号より



■CG合成部門エントリー
■使用モデル 
*タミヤ 1/35・74式戦車 
      同・M247ヨーク
      同・M551シェリダン
*富士重工&川崎重工 1/1・AH-1S(北富士演習場にて撮影)
■創作理由…ヨークの砲塔が74式の車体に簡単にはまったのと、
        自衛隊仕様の兵器が凄〜く好きなので。
■画像製作・SORA